全国有機農業の集い・マルシェ「農の難問ギモンを語ろう」報告
- 2019.03.06 Wednesday
- 11:10
遅ればせながら、2月23・24日(土日)「全国有機農業の集い2019 in 琵琶湖」にご参加、ご協力いただきありがとうございました。
おかげさまで1日目300人、2日目500人の参加を得て、大盛況のうちに終了することができました。
大会の様子は、使い捨て時代を考える会facebookページで見られます。
また、2日目の「全国有機農業者らのここだけマルシェ」には地域ミニコミ誌の取材があり、こちらに記事を掲載いただきました。
カタリバ特設コーナー
さて、そのマルシェにて、会とセンターの企画で「農の難問ギモンを語ろう!」コーナーを実施しました。
長年の経験をもつ有機農家の方に、なんでも質問をぶつけてみようというライブ企画です。
このふところの広い回答者役を引き受けてくださったのは、会生産者としておなじみの尾崎 零さん (日本有機農業研究会幹事、「農を変えたい!全国運動」幹事)。
新規就農者から、生産者から、小さな子どもの親御さんから、さまざまな角度からの質問に快刀乱麻でお答えいただきました。
その内容をダイジェストでご紹介します。
Q. 農業一本でやっていくべきか、それとも他の道と同時に取り組んだ方がいいのでしょうか?
A. 一言でいえば好きにすればいい、です。専業ではなく半農半Xのような指向もあるが、とにかくやりたいことをやってみること。いろいろやってみれば見えてくる。探求心を持って、自分の軸を定めることが大事。
Q. 見栄えや虫食いなど、消費者のわがままを生産者はどこまで受け入れるべきでしょうか?
A. 嫌なものは食べたくないのでしょうから、食べなくてもいい。それでもあなたの作ったものが食べたいと思われるようになろう。要は、消費者から支持されるかどうか。といっても、もちろん良いものを作れることが基本。たとえばこの時期の白菜は、立派にできていても霜に毎日当たっていると次第にズルけてだんだん細く貧相な形になっていく。でも、普段はきちんとした白菜を作っていることを知っている人は買ってくれるでしょ。
Q. 農作物の最近のトレンドは苺だったが、そろそろ終わりのようです。次に来るのは何?
A. 僕は“売れる商品”ではなく、食べものを作っている。だから次の流行りが何かはわからない。
Q. 昨年育てた大豆が葉っぱばかりで実がつきませんでした。どうして?
A. 暑すぎて着果しなかったのだろう。豆類は暑さに弱く、インゲンなども昨年は不作だった。
Q. サツマイモにイモムシが大量発生するのですが、どうしてでしょうか。 砂地で前から肥料を入れていたところに油粕をまきました。
A. 基本的に、肥料分が多いとそうなりやすい。サツマイモに肥料はあまり必要ない。以前から肥が残っていたのならなおさら入れることはなかった。
Q. 周辺農家が慣行栽培なので、無農薬の私のところに虫が集まるようなんですが。
A. 無農薬だから虫が周辺から集まってくる場合があるかもしれないが、だからといって、必ずそうなるとは限らない。他の要因も考えたほうがいい。
Q. 草対策はどうすればいいですか。
A. 草は刈るか除草しかないですね。あとはマルチ。ポリには是々非々があるが、草マルチという方法もある。草が種をつける前にとってしまおうとも言われるが、草はそう簡単なものではない。発芽時期にも差があり、土の中で何年も休眠してから出てくるものもある。
Q. 水田で繁殖力の強い外来の雑草が畦から侵入してきて困っている。どうすればいいですか。
A. 米はやってないのであまり詳しくはないが、とにかく刈るしかない。畦シートを敷いて入ってこないように出来ればいいが、難しいだろう。大変だが刈り続けよう。
Q. 大根が、大きくなりすぎてスが入りました。
A. スが入るのは収穫が遅いか葉と根の肥料分のバランスが取れていないか。採り遅れのないようにしよう。
Q. 子どもの給食に不安があります。子どもは野菜を食べずに炭水化物ばかり食べたがる。栄養バランスとオーガニックはどちらを優先すべきですか。
A. 健康を維持する四つの要因。恵まれた環境、ストレスのない精神の安定、適度な運動、安全で栄養バランスのとれた食生活。なので、オーガニックで栄養バランスのとれた食生活が基本。アトピーやアレルギーのこともあって最近の学校や保育園などは弁当持参にも柔軟に対応してくれるようになっているはず。炭水化物を食べたいならせめて玄米にしては。玄米は完全食だから必要な栄養も多い。子どものために自分でしっかり勉強して工夫してください。
Q. 農家の方は自家採種への意欲が薄いように思う。自家採種をされていても交雑していっていて、このままでは原種が失われると危惧しています。
A. 僕は自分が次の作物を作るために種を採っているので、交雑してもかまわないと思っている。自然界では交雑して変わっていくのが普通。ただ、在来種が人間の都合で消えていくのはもったいない。そのために種取りネットワークのようなものがあり、守るために熱心な人たちが集まっている。地道に繰り返して守ること。在来種の保全が大事だと思う人は、そういった活動を通して訴え、守るしかない。
Q. 自然薯を作っていますが、販路をどう開拓すればいいですか。
A. 日常的に食べるものではない作物には一工夫いる。ブランド化もひとつだが、消費者のニーズをどう高めるか。食べたくなるような自然薯をどうデザインするか、需要喚起を個人的にするのはキツいので、同業者が集まって真剣に考えては。
Q. 尾崎さんは、まだ尾崎零がブランドになっていなかった時代に、どうやってそれを獲得されていったのですか。
A. まずチラシを作って近郊の住宅地にまき続けた。そのうちマスコミが取り上げてくれるようになった。すると大手スーパーから声がかかり、試験的に店頭販売ができるようになった。そこでの大事なポイントは、「値段は自分でつけること」。生産者が値をつけるなんてと店は驚いたが、その代わり残ったものは自分で全量引き取ると提案して、それでいくことになった。店頭販売の際は通る人にどんどん声をかけて食べてもらい、ファンを作っていった。固定客がそこそこ集まった時点で、スーパーとの付き合いはやめて、ファンに直接販売する形に切り替えた。工夫しよう!
以上、たった50分間の小さなコーナーでしたが、いろんな悩みが飛び出し、実践者からのアドバイスが得られて、中身の濃い良い時間になったと思います。
参加してくださった皆さま、ありがとうございました。
(げんころ/今回は企画運営、司会役)
JUGEMテーマ:稲作り・田植え・田んぼ・畑・野菜づくり